美術館問題に一区切り

12月定例月議会の最終日20日、これまで枚方市で様々な議論があった美術館について、「条例の廃止」「寄付の解消についての和解」が議案として上程されました。岩本も、会派を代表して質疑を行いました。質疑の内容は以下の通りです。今回の質疑も会派の皆様にもご協力いただき、ありがとうございました。(討論は岡沢議員がされました、こちらも末尾に記載しています)

美術館問題に一区切りといったところですが、寄付者との間で3点の協力事項があり、これについては無制限にならないよう、ある程度の確認が必要と考えています。

岩本の質疑

Q1

今回、議案第74号「美術館条例の廃止」、議案第76号「和解について」の議案が提出されましたが、私は、この間のいわゆる「美術館問題」については、いくつかのポイントがあったと思っています。

まず1つ目は当時、枚方市においては、何ら「美術館構想」なるものがない中、突然の寄附の話に飛びついてしまった「当時の判断ミス」。
2つ目は寄附者と交わした平成27年度内の美術館開館を内容とする「平成26年3月24日付け覚書の不履行」。

3つ目は「負担付寄附の収受」と「美術館条例の制定」について2度の議決、及び「2度の請願不採択」と、市議会では市の方針をある意味信頼して議会として判断をしてきたことに対する「市議会と行政との信頼関係を一方的に損なう行為」。

これらが今回のポイントであると考えています。それぞれについて、市の見解をお伺いします。なお、3つ目のポイントにつきましては、市長にお答えいただきたいと思います。

A1-1

(産業文化部長)はじめに、当時、美術館の建物寄附の申出をお受けすると判断したことにつきましては、市民の美術等の文化芸術活動が盛んな状況をふまえ、美術館は文化芸術の振興や地域の発展と活性化につながる施設であること、また、子どもたちの教育の観点からも、価値ある施設であると市として判断したものです。

次に、寄附者と交わした覚書につきましては、履行すべく、早期の工事着工に向けた環境づくりとして、美術館ニュースの発行など市民への情報発信や公園管理業務として立入禁止区域の設定などに取り組んでまいりました。

A1-2

(市長)続きまして、議会と行政の信頼関係についてですが、今回の美術館整備に向けた進め方につきましては、様々な状況の中、その都度、市として課題解決に向けた検討を重ね、取り組んできましたが、このたびの結果につきましては、市議会議員の皆様に、誠に申し訳なく思っております。

市政運営において議会との信頼関係を確保していくことは重要であると考えており、今後、信頼関係を損なうことのないよう、全力を尽してまいります。

 Q2

枚方市において美術館整備にかかる寄附を受けることができないということは、全くもって議会軽視であり、行政側の対応に「熱意」が足らなかったと言わざるを得ません。市として、行政として重く受け止め、猛省すべきであり、議会との約束は「守る」ということを肝に銘じていただきたい。そして、二度と議会を裏切ることのないように、しっかりと市政運営に向かっていただくことを、強く意見しておきます。

次に、寄附者と交わした新たな覚書の中で、第4条に寄附者への協力として、他市で寄附者が美術館を建設された場合、可能な範囲で「市所蔵の美術工芸品の貸出」「美術館の企画運営に対する必要に応じた枚方市の職員による支援」「美術館が建設されるまでの間における寄附者所蔵の美術工芸品に係る寄託引き受けの延長」とあります。

これらにつきましては、市として「可能な範囲で」ということが前提であると考えますが、具体的にどういうことを想定しておられるのか、お尋ねします。

 

A2

(産業文化部長)まず、「市所蔵の美術工芸品の貸出」についてですが、本市には500点を越える美術工芸品と今後、植村猛アート基金の植村氏から最終的に200点を超える作品寄贈を受けます。これらの作品の中から、当該美術館が希望する作品を、一定期間、貸出をさせていただくものです。

次に、「美術館の企画運営に対する必要に応じた枚方市の職員による支援」につきましては、当該美術館の求めに応じて、本市職員による助言などを想定しているところです。

最後に「美術館が建設されるまでの間における寄附者所蔵の美術工芸品に係る寄託引き受けの延長」につきましては、現在、寄附者所蔵の作品と資料、計97点を寄託品としてお預かりしておりますが、当該美術館が建設されるまでの間、引き続きお預かりをさせていただくというものです。

なお、寄託品に対する保険加入につきましては、これまでと同様、寄附者において加入していただくこととしております。

意見・要望



3点の協力内容については、この覚書の文言から制限なく協力を求められることにならないよう、想定される行為を文書に列挙して確認しておくことをお願いしておきます。

また今回の問題は、政策決定やそれに至る意思形成過程において、手順やその透明性に大きな問題があったことから、起こったものであると考えています。

意思形成過程における議会との関係や、市民参画、審議会などの活用、情報公開など、一定のルールがあるにも関わらず、例外的にプロセスを軽視して進められたことは遺憾に感じます。今後は、政策の意思形成過程において、しっかりとしたルールを確立するとともに、それに則った運用を行うようお願いいたします。


岡沢議員の賛成討論(原稿ママ)

ただいま上程されました、議案第74号「枚方市立美術館条例の廃止ついて」及び議案第76号「和解について」未来に責任・大阪維新の会を代表して、賛成の立場で討論をいたします。
この間のいわゆる「美術館問題」について、岩本議員の質疑と重複する部分もありますが、その問題点の整理と総括をさせていただきたいと思います。
平成25年に市民の方から寄付の申し出があり、議会の中でも時間をかけて議論をすべきだという意見があった中、平成26年3月に負担付き寄付について、反対が約3分の1だったものの賛成多数で可決されました。

当時のスケジュールとしては、平成27年の6月定例月議会にて、地域振興部長が「美術館につきましては、昨年3月に負担付き寄附(美術館の建物)の収受についての議決をいただき、当初のスケジュールでは、昨年8月29日より準備工事を含めた建設工事に着手し、本年7月末ごろに竣工後、美術品に影響を与えるコンクリート等の湿気を乾かす、いわゆるからし期間を経て、今年度中の開館を目指しておりました。

しかしながら、美術館整備に反対する市民の妨害行為により、工事着工がおくれている状況でございます。」との答弁でした。

このスケジュールから言うと、H27年の7月末には建物が出来上がっており、もろもろの準備期間を経て、H27年度中には開館の予定でした。

しかしながら、平成26年3月の議決を得てからは、市民の理解が進まず工事が一切行われていない状況が続き、その間、署名や請願なども出されていましたが、議会としては、当時の竹内市長も平成26年の9月議会にて「市長として、一日も早く解決できるように、今後ともきめ細かく正しい情報提供を行うことはもとより、一人でも多くの市民に御理解をいただけるよう、あらゆる方策を講じてまいる」と表明されましたので、行政が市民に理解を得て美術館建設を進めると理解しておりましたが、結果としては、平成27年7月末までに、美術館は完成しませんでした。
このことから平成27年度中の開館はすでに不可能で、すでに覚書の内容は履行が不可能という状態でした。

その後、伏見市長に交代し、香里ケ丘での美術館建設を白紙に戻して、寄付者と協議を行い、総合文化施設の中に併設する案や、現金寄付なども協議を重ねてこられましたが、最終的に、今回の和解に至ったと理解をしております。

この美術館問題には3つのポイントがあります。1つは当時の判断ミス、2つ目は覚書の不履行。3つ目は、議会との信頼関係を損なう行為の3つです。

まず1つ目の「判断ミス」についてです。枚方市においては、何ら「美術館構想」なるものがない中、平成25年7月に市民から美術館建物寄付の申し出があり、平成26年3月には議決を迫るという、突然の寄附の話に対して議会や市民への説明を十分に果たさないまま飛びついてしまった「拙速(せっそく)な判断ミス」です。執行機関たる行政として本当に稚拙(ちせつ)な判断対応であったと思っています。

建物寄附といった形が枚方市にとって初めての経験であるならば、こそ、もっと慎重に時間をかけて、専門家や市民の意見もしっかり聞いて、深い議論をすべきであったと考えます。まさしく最初の出発点を間違ったら最後まで引きずってしまう典型的な事案になってしまったのではないでしょうか

次に2つ目の覚書の不履行について、寄附者と交わした平成27年度内の美術館開館を内容とする「平成26年3月24日付け覚書」を実現するための意志や行動が足りていないかったことです。寄附者が美術館建設を行い、市もその実現に向けて最大限努力すると覚書にあります。

しかしながら、当時の執行責任者が本当に的確な指示や行動をされていたのかは多いに疑問が残るところであります。美術館問題がここまでこじれたのは、美術館が平成26年3月の覚書締結、平成26年9月の美術館設置条例可決を受けても、何ら整備が進まなかった、鍬の一つも建設用地には、入らなかったことに最大の原因があることを忘れてはいけないと思います。

このことが、市議会の二度の議決を踏みにじることにも繋がりますし、議決の重さを軽(かろ)んじていることに繋がるものと考えます。

3つ目は「負担付寄附の収受(しゅうじゅ)について」と「美術館条例の制定について」及び「2度の請願不採択」と市議会では市の方針をある意味信頼して議会として判断をしてきたことに対する「市議会と行政との信頼関係を一方的に損なう行為」です。

建設が着々と進んでいる中で、突然に「白紙に戻す」なんてことを言ったのであれば、伏見市長の責任は大きなものであるとは思いますが、今まで申し上げたように事実経過を冷静に分析し、工事が一切進んでいない状況を鑑みると、そのようなことでは決してなかったと思います。

最後に、今回の美術館 問題は市議会と市行政機関との信頼関係が損なわれてしまったことは、たいへん遺憾であります。

今後二度と、このような失態をおかす、ことのないよう肝に銘じていただくことを強く申し上げ、この美術館問題について、一定、寄付者と和解に至ったことを評価し、条例の廃止と和解の内容についての賛成討論といたします。